○ふるさと江差の街並み景観形成地区条例

平成8年3月25日

条例第2号

目次

前文

第1章 総則(第1条~第7条)

第2章 歴史を生かす街並み景観形成地区(第8条~第15条)

第3章 歴史的景観形成指定建物等(第16条~第21条)

第4章 街並み景観形成に関する住民参加(第22条・第23条)

第5章 表彰、助成等(第24条~第26条)

第6章 江差町歴史を生かす街並み景観審議会(第27条~第33条)

第7章 雑則(第34条)

前文(条例制定の意義・理念)

わたしたちの郷土、追分の町、北海道の心のふるさと江差町は、日本海交流とかもめ島を中心に形成・発展し、美しい自然と数多くの豊かな歴史的・文化的遺産を保存・伝承している町です。

わたしたちは、この江差らしい美しく人々に心の安らぎを与える歴史的景観を残した街並みを、さらにゆたかな個性的で魅力的なものにしていくことを願い、優れた歴史的・文化的遺産を生かしながら、江差を代表する顔として、活力と魅力あるまちづくりを進めていくために、この条例を制定します。

この条例による江差らしい街並み環境の整備は、次の基本理念により推進されるものです。

1 江差町を代表する顔づくりとして個性ある街並み景観を保全・再生・創造していきます

1 歴史的街並み環境を町のシンボルとして、町民全般の共感を育むものとして保全・継承していきます

1 快適な生活環境の質的・精神的・経済的な向上を図つていきます

1 街並み景観は、地域文化の具現化したものとして、町民合意のもとに形成され、その向上により、町民の文化的意識の高揚を図つていきます

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、江差らしい街並み景観の形成に必要な事項を定めることにより、江差の歴史的・文化的特性を生かしながら、江差らしい街並み環境を個性的で快適なものにし、町民一人ひとりにとつて親しみと愛着と誇りあるものにすることにより、文化的な町民生活の向上に寄与することを目的とする。

(用語の定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 景観の形成 江差らしい景観を守り、育て、創ることをいう。

(2) 建物等 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第1号に規定する建築物、同法第88条第1項に規定する工作物及び屋外広告物法(昭和24年法律第189号)第2条第1項に規定する屋外広告物をいう。

(3) 事業者 建物等及び開発行為の発注、設計及び施行をする者をいう。

(4) 街並み景観 いにしえ街道沿道の家並がつくる江差らしい景観のことをいう。

(5) 街並み環境 歴史性・文化性を備えた江差らしい街並み景観を含む地域の質的、精神的及び経済的な生活環境全般をいう。

(町長の基本的責務)

第3条 町長は、第1条に掲げる目的を達成するために、必要な調査、研究を行うとともに景観整備に係る基本的かつ総合的な施策を策定し、これを実施するものとする。

2 町長は、前項の施策の策定及び実施に当たつては、町民、事業者及び江差町歴史を生かす街並み景観審議会(以下「景観審議会」という。)の意見が十分反映されるよう努めるものとする。

(町民及び事業者の基本的責務)

第4条 町民は、優れた街並み環境を創る主体であり、町民一人ひとりがまちづくりに自覚と関心を持ち、町民が良い環境を創り、良い環境が町民を育てることを意識し、街並み景観の形成に努めるとともに、町が実施する街並み景観の形成やまちづくりに関する施策に協力するものとする。

2 事業者は地域社会の一員として、その事業活動を通じて、地区住民との信頼関係を深め、町が実施する事業に協力しながら街並み景観の形成に努めるものとする。

(啓発)

第5条 町長は、町民及び事業者の街並み景観の形成に関する知識の普及と意識の高揚を図るため、広報その他必要な措置を講じ、啓発に努めるものとする。

(国の機関等に対する協力の要請)

第6条 町長は、必要があると認めるときは、国若しくは地方公共団体又はこれらの機関(以下「国等」という。)に対して、街並み景観の形成について協力を要請するものとする。

(財産権等の尊重及び公益との調整)

第7条 町長は、この条例の運用に当たつては、関係者の財産権その他の権利を尊重するとともに、公共事業その他の公益との調整に留意しなければならない。

第2章 歴史を生かす街並み景観形成地区

(歴史を生かす街並み景観形成地区基本計画の策定)

第8条 町長は、江差らしい街並み景観の形成を総合的かつ計画的に進めるため、その基本となる歴史を生かす街並み景観形成地区基本計画(以下「基本計画」という。)を、町民及び事業者と協力して策定するものとする。

2 町長は、基本計画を策定しようとするときは、あらかじめ景観審議会の意見を聴かなければならない。

3 町長は、基本計画を策定したときは、これを告示するものとする。

(歴史を生かす街並み景観形成地区の指定)

第9条 町長は、江差らしい街並み景観の形成を重点的に図る必要があると認める地区を、歴史を生かす街並み景観形成地区(以下「景観形成地区」という。)として指定することができる。

2 町長は、景観形成地区を指定しようとするときは、あらかじめ当該地域の住民、その他利害関係者の意見を聴くものとする。

3 町長は、景観形成地区を指定しようとするときは、江差町都市計画審議会及び景観審議会に諮り、その意見を尊重しなければならない。

4 町長は、景観形成地区を指定したときは、これを告示しなければならない。

5 前3項の規定は、景観形成地区を変更し、又は解除する場合について準用する。

(歴史を生かす街並み景観形成基準)

第10条 町長は、前条第1項の規定により景観形成地区を指定したときは、あらかじめ景観審議会の意見を聴いた上で、当該地区ごとに景観の形成のための歴史を生かす街並み景観形成基準(以下「景観形成基準」という。)を定めるものとする。

2 町長は、景観形成基準を定めたときは、これを告示しなければならない。

3 景観形成基準の対象範囲は、道路、公園、広場その他公共の用に供する空地など公共地内の公的領域と公的領域から容易に視認できる民間地内の境界領域を半公的領域としてとらえ、対象範囲とする。

4 景観形成基準には、景観形成地区ごとに次に掲げる事項のうち必要な事項について定めるものとする。

(1) 建物等の規模、位置、用途、色彩、意匠及び形態に関する事項

(2) 樹木の態様に関する事項

(3) その他町長が必要があると認める事項

5 前条第2項から第4項までの規定は、景観形成基準を制定し、又は変更する場合について準用する。

(景観形成地区における届出を要する行為等)

第11条 景観形成地区内において、次に掲げる現状変更行為を行おうとする者は、あらかじめ、規則で定めるところにより、その内容を町長に届け出なければならない。また、届け出た事項を変更しようとする場合も、同様とする。

(1) 建物等の新築、改築、増築、移転又は除却

(2) 建物等の外観の修繕若しくは模様替え又は外観の色彩の変更

(3) 屋外における物品の集積又は貯蔵

(4) 土地の形質の変更

(5) 樹木等の伐採

(6) 前各号に掲げるもののほか、町長が景観に影響があり届出の必要があると認める行為

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる行為については、同項の規定による届出を要しない。

(1) 国等が行う事業に係る行為

(2) 非常災害のため必要な応急措置として行う行為

(3) 景観形成地区の指定がなされた際、当該地区内において、既に着手している行為

(4) 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で規則で定めるもの

(景観形成基準の遵守)

第12条 景観形成地区において、前条第1項各号に掲げる行為を行おうとする者は、当該行為が景観形成基準に適合するよう努めなければならない。

(助言及び指導)

第13条 町長は、第11条第1項の規定による届出があつた場合において、街並み景観の形成を図るために必要があると認めるときは、当該行為を行おうとする者と十分な協議を行つた上で、当該行為を行おうとする者に対し、規則で定めるところにより必要な措置を講ずるよう助言し、及び指導することができる。

(空地の管理等に関する要請)

第14条 町長は、景観形成地区において空地が街並み景観を阻害していると認めるときは、当該空地の所有者、管理者又は占有者(以下「所有者等」という。)に対し、街並み景観の形成に配慮した空地の管理及び利用が行われるように要請することができる。

(街並み景観形成の先導的役割)

第15条 町長は、景観形成地区において、道路、公園その他の公共施設の整備を行うに当たつては、景観整備に係る総合的施策との整合を図るとともに街並み景観の形成に先導的役割を果たすように努めるものとする。

第3章 歴史的景観形成指定建物等

(歴史的景観形成建物等の指定)

第16条 町長は、景観形成地区内の建物等において、次の各号のいずれかに該当し、かつ歴史的街並み景観の形成を図るために必要があると認めるものを、あらかじめ景観審議会の意見を聴いた上で、その建物等の全部又は一部をその所有者等の同意を得て、歴史的景観形成建物等(以下「景観形成建物等」という。)に指定することができる。

(1) 景観形成地区内の街並み景観の核となる文化財等の建物の周辺にあり、これらと相まつて優れた街並み景観を形成する建物等

(2) 景観形成地区内の拠点付近に位置し、視覚的に注目を集める建物等

(3) 景観形成地区内の歴史的建物等の分布状況により残しておきたい建物等

(4) 景観形成地区内の歴史的建物等のうち江戸、明治、大正又は昭和初期等時代の建築様式をよく表す建築物等

(5) その他町長が歴史的街並み景観の形成を図るために必要があると認める建物等

2 町長は、前項の規定により景観形成建物等の指定をしたときは、その旨を告示するとともに、所有者等に通知を行うものとする。

3 町長は、景観形成建物等が滅失したとき、又は損傷等により価値を失つたと認めるとき、その他特別の理由があると認めるときは、景観形成建物等の指定を解除することができる。この場合においては、前項の規定を準用する。

(景観形成建物等の指定条件の承継)

第17条 景観形成建物等の指定に同意した所有者等は、景観形成建物等に関する権利の移動があつた場合には、規則で定めるところにより、その内容を町長に届け出るとともに、新たな景観形成建物等の所有者等に対して、景観形成建物等指定についての条例及び規則の内容を承継するものとする。

(景観形成建物等の保全・整備基準)

第18条 町長は、第16条第1項の規定により景観形成建物等の指定をしたときは、あらかじめ景観審議会の意見を聴いた上で、景観形成建物等ごとに保全及び整備のための基準(以下「保全・整備基準」という。)を作成するものとする。

2 前項の保全・整備基準は、次に掲げる事項のうち町長が必要があると認めるものについて作成するものとする。

(1) 景観形成建物等の指定の範囲内における外観の意匠、構造、材料及び色彩に関する事項

(2) 景観形成建物等に係る敷地の利用に関する事項

(3) その他町長が、街並み景観の形成を図るために必要があると認める事項

3 町長は、第1項の保全・整備基準を作成したときは、これを告示するものとする。

4 前項の規定は、保全・整備基準を変更し、又は廃止した場合について準用する。

(保全・整備基準の遵守及び景観形成建物等の届出を要する行為)

第19条 景観形成建物等の所有者等は、当該建物等を保全・整備基準に従つて良好に維持管理しなければならない。

2 景観形成建物等の所有者等は、当該建物等の現状を変更しようとするときは、規則で定めるところにより、あらかじめその内容を町長に届け出なければならない。ただし、第11条第1項の規定により届出の義務を負う行為、又は同条第2項第4号の規定により届出の義務を負わない行為については、この限りでない。

(助言及び指導)

第20条 町長は、景観形成建物等の保全又は整備に関し必要があると認めるときは、所有者等に対し必要な措置を講じるよう助言し、及び指導することができる。

(助成)

第21条 町長は、景観形成建物等の保全又は整備のために必要があると認めるときは、その所有者等に対し技術的援助を行い、又は保全若しくは整備に要する経費の一部を予算の範囲内において助成することができる。

第4章 街並み景観形成に関する住民参加

(景観協定の認定等)

第22条 町長は、景観形成地区内の土地、建物等の所有者等が、景観形成基準を遵守しながら締結した当該地区における景観の形成に関する協定で、その内容が優れた街並み景観の形成に寄与し、規則で定める要件を満たしていると認めるものを景観協定として認定することができる。

2 前項の規定により景観協定の認定を受けようとするものは、規則で定めるところにより、町長に申請しなければならない。

3 景観協定を廃止し、又はその内容を変更したときは、代表者は、速やかに規則で定めるところにより、町長に届け出なければならない。

4 町長は、景観協定が優れた景観の形成上適当でなくなつたと認めるときは、当該景観協定の認定を取り消すことができる。

(景観形成住民団体の認定等)

第23条 町長は、景観形成地区の街並み景観の形成に寄与する目的をもつて組織された住民団体で、規則で定める要件を満たしていると認められるものを景観形成住民団体として認定することができる。

2 前項の規定による認定を受けようとする住民団体は、規則で定めるところにより、町長に申請しなければならない。

3 町長は、景観形成住民団体が規則で定める要件に該当しなくなつたとき、その他景観形成住民団体として適当でないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。

第5章 表彰、助成等

(優れた街並み景観形成表彰)

第24条 町長は、景観形成地区内の優れた街並み景観の形成に寄与していると認める建物等について、その所有者等、設計者、施工者を優れた街並み景観形成者として表彰(以下「表彰」という。)することができる。

2 前項に規定するもののほか、町長は優れた街並み景観の形成に貢献していると認められる個人、団体等を表彰することができる。

3 町長は、前2項の表彰を行おうとするときは、あらかじめ景観審議会の意見を聴くものとする。

(助成)

第25条 町長は、第21条に定めるもののほか、景観形成住民団体の活動、景観形成地区内の景観協定の締結その他街並み景観の形成に著しく寄与すると認める行為を行うものに対し必要な技術的援助を行うことができる。

2 町長は、予算の範囲内において、次の各号に掲げるものに対し、当該各号に定める経費の一部を助成することができる。

(1) 景観形成住民団体 その活動に要する経費

(2) 景観協定の内容となる優れた街並み景観の形成に寄与すると認められる行為を行うもの 当該行為に要する経費

(3) 景観形成地区の街並み景観の形成に著しく寄与すると認める行為を行うもの 当該行為に要する経費

(諸制度の活用)

第26条 町長は、この条例に定めるもののほか、都市計画法(昭和43年法律第100号)、建築基準法その他法令に基づく街並み景観の形成に資する諸制度を活用するよう努めるものとする。

第6章 江差町歴史を生かす街並み景観審議会

(設置・審議事項)

第27条 町長は、町長の附属機関として、景観審議会を設置する。

2 景観審議会は、町長の諮問に答え、景観形成地区の街並み景観の形成に必要な事項について、調査審議を行い、町長に意見を述べることができる。

3 景観審議会は、江差らしい優れた街並み景観の形成に関することについて町長に意見を述べることができる。

(景観審議会の組織)

第28条 景観審議会の委員は、12名以内とする。

2 委員は、次の各号に掲げる者のうちから町長が委嘱する。

(1) 町議会議員

(2) 町内外の学識経験者・有識者

(3) 地区住民の代表者

(4) 関係行政機関の職員

(5) 町職員

(6) その他町長が必要と認める者

3 特別委員を置くことができる。

(任期)

第29条 委員の任期は、2年とする。ただし、再任を妨げない。

2 委員に欠員が生じた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

(会長及び副会長)

第30条 景観審議会に、会長及び副会長を各1人置き、委員の互選によりこれを定める。

2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。

3 副会長は、会長を補佐し、会長に事故あるときは、その職務を代理する。

(会議)

第31条 景観審議会は、会長が招集し、会長が会議の議長となる。

2 景観審議会は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開くことができない。

3 会議の議事は、出席委員の過半数で決定し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

4 議長の判断で、必要に応じて、特別委員の出席を求め意見を徴することができる。ただし、特別委員は、議事に加わることはできない。

(部会)

第32条 景観審議会に、必要に応じて部会を置くことができる。

(細則)

第33条 第27条から前条までに定めるもののほか、景観審議会の組織及び運営に関し、必要な事項は、規則で定める。

第7章 雑則

(委任)

第34条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、平成8年4月1日から施行する。

ふるさと江差の街並み景観形成地区条例

平成8年3月25日 条例第2号

(平成8年3月25日施行)

体系情報
第10編 設/第2章 都市計画・公園
沿革情報
平成8年3月25日 条例第2号