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はじめに
分権改革によって、自治体の権限が拡大したことに伴い、議会の役割も大きくなった。これに対応して、議会改革を積極的に進める議会がでてきており、そのような議会改革を継続し発展させることなどを目的として、議会基本条例を制定する自治体が出現している。栗山町議会基本条例(2006年制定)がその第1号であるが、それに続いていくつかの自治体でも議会基本条例が制定されている。
本稿では、この議会基本条例を取り上げて、その制度設計について考えてみたい。
一 議会基本条例とは
議会基本条例は、議会に関する基本的事項について定めた条例をいう。
1 議会基本条例の名称・内容
@自治基本条例・議会基本条例・行政基本条例
自治体は、議会、行政、住民から構成される。最初の自治基本条例である「ニセコ町まちづくり基本条例」は、議会規定を有していないため、行政基本条例であり、議会に関する基本的事項を定めて初めて本格的な自治基本条例となるという見方があった(なお、ニセコ町条例は2005年改正で議会規定を取り入れている)。議会基本条例と行政基本条例を統合したものが自治基本条例であるという立論である(神原勝「ニセコ町「基本条例」が開いた扉」世界2001年4月号37頁)。もっとも、自治基本条例とは別に、これと整合性を図りながら、議会基本条例を制定することはあり得るものである(三重県伊賀市)。
A議会に関する基本条例
議会に関する条例等として、表のようなものが制定されている。
議会基本条例は、このような条例等の一部を取り込みうるものであり、議会に関する基本的事項を総合的体系的に規定する条例である。他の議会に関する条例等は、議会基本条例と整合性を図りつつ体系化が図られなければならない。
2 議会の憲法上の位置づけ
@二元代表制の制度
このように、憲法は、「議会」と「長」が、同時に並列的に住民を代表し、それぞれ直接住民に責任を負うという制度、つまり、二元代表の制度を構想している。栗山町議会基本条例(以下、条例は自治体名でのみ表記する)では、この二元代表制における議会と長の関係を次のようにとらえている。
「この二つの代表機関は、ともに町民の信託を受けて活動し、議会は多数人による合議制の機関として、また町長は独任制の機関として、それぞれの特性をいかして、町民の意思を的確に反映させるために競い合い、協力し合いながら、栗山町としての最良の意思決定を導く共通の使命が課せられている」(前文)。これは二元代表制の本質を規定するものとして高く評価できよう。
A「議事機関」としての議会
二元代表の一翼を担う議会は、憲法上、「議事機関」と規定されている。議会が、「議事機関」であるということは、一般的には、議会が自治体の重要事項について審議議決する、自治体の団体意思を決定する機関である、ということを意味している。地方自治法は、この「議事機関」としての議会に対して、@立法権限、A行政的意思決定権限、B行政監視権限を付与しているところである(96条1項、100条)。
3 議会の役割・機能
議会の役割・機能をどのように解するかによって、議会運営の構想は異なってくる。
@政策立案・行政監視・論点開示
議会の役割・機能として、政策立案と行政監視をあげることができる(人見剛「住民自治の現代的課題―地方議会・住民参加・住民投票―」公法研究62号(2000年)192頁以下)。また、栗山町条例では、「自治体事務の立案、決定、執行、評価における論点、争点」を「発見、公開すること」が「討論の広場である議会の第一の使命である」とされており、論点開示も議会の重要な役割・機能として考えることができよう。
A協働型議会
江藤俊昭『協働型議会の構想―ローカル・ガバナンス構築のための一手法』(信山社、2004年)は、分権時代の地方議会は、監視機能・政策立案機能を有する「監視型議会」とそれを住民参加で行う「アクティブ型議会」の両方の役割を担う「協働型議会」でなければならないとする議会像を提示している。すなわち、議会は、野党的機能=監視機能と同時に、地区や業界などの地域的個別的要望を踏まえつつも全体的長期的視点での「地域デザイン(ビジョン)構想者」の役割を担わなければならず、また議会自身も住民参加を取り入れ、議会が「公開の場」で住民の提案あるいはそのオルタナティブを「協議=熟議」によって調整し最終決定するという役割を担わなければならない、としている。今後の議会像として、注目に値するものといえよう。
二 議会基本条例の制度
設計 議会は、二元代表の一翼を担う議事機関として、自治体における政策立案・行政監視・論点開示の役割・機能を果たすことが期待されている。いずれの役割・機能に重点を置くかは、自治体によって異なると思われるが、以下では、栗山町条例を中心に、ややランダムに、議会および議員に関する議会基本条例の論点について取り上げる。
1 議会・議員の活動原則
議会は、議事機関としての役割・機能を果たすにあたって、情報公開および住民参加を重んじ、言論の府として、その特質を十分に発揮して活動することが求められる。また、議員の役割に即した活動原則の規定が望まれよう。
@議会の活動原則
栗山町条例では、議会の活動原則として、@開かれた議会としての活動、A町民参加の推進、B討論の広場としての活動をあげている。@は、会議の公開および情報公開、Aは、議会への住民参加や町民等との交流、Bは、議員間および議員と住民等の討論などにつながるものである。
A議員の活動原則
また議員の活動原則として、栗山町条例では、議員相互間の自由な討議の推進、町民意見の的確な把握、選良にふさわしい活動、町民全体の福祉を目指した活動をあげている。議員は、そのため、不断にその能力の研さんをすべきことも要請されている。
2 議会と住民の関係
@議会の情報公開
議会は、まずはその決定過程を見せるところから始め、議会の透明性の確保を図ることが必要である。栗山町条例は、住民に開かれた議会として、会議の公開、議会の情報公開、議案に対する議員の賛否の公表、議会活動を説明報告し住民の意見を聴く「議会報告会」の開催を行うことを規定している。自治体における実際の手法としては、インターネット・CATV等による議会中継、広報紙、ホームページなどが利用されている。
A議会への住民参加
また、現行制度上の参考人・公聴会制度の活用、請願・陳情については政策提案として提案者の意見を聴くこと、会期中又は閉会中を問わず、住民の意見を聴くための「一般会議」を開催することを定めている。NPO等との意見交換の場の設定も規定されている。
3 議会と執行機関との関係
@首長等の提案の説明
議会基本条例では、首長等が政策提案をする場合に、政策等の発生源、検討した代替案、他の自治体の政策、総合計画上の根拠又は位置づけ、関係する法令及び条例等、財源、および将来のコスト計算などを説明するように努めるとされているのが、多数である。
A質疑
また、質疑については、一問一答方式、首長等の反問権を規定して、議員と首長等の質問・回答・意見がかみ合い活発な議論がなされるように配慮しているところが多い。
4 議会の組織・権限・審議
@組織
議会の組織に関して、議会基本条例では、法定外の会議体の設置(栗山町の一般会議、伊賀市の政策会議など)、定数、議会の付属機関(三重県条例)、調査機関の設置(三重県条例)、あるいは議会事務局の機能強化などが定められている。議会図書室の住民公開もある。
A権限
また議会権限は、分権改革によって拡大しているが、いくつかの議会基本条例では、地方自治法96条第2項(「条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務に係るものを除く。)につき議会の議決すべきものを定めることができる」)の規定に基づいて、総合計画、都市計画マスタープラン、住宅マスタープランなどを議決事件に追加している。
B審議
議会審議については、まず日程・案件等の広報が必要であり、いくつかの条例では、開始時間の厳守・休憩の場合の説明、議員間の自由討議、そのための首長等への本会議等への出席要請の必要最小限度化などが定められている。首長等との質疑ついては、本稿3Aを参照。
5 議員の政治倫理・報酬、政務調査費・研修
@政治倫理・報酬・政務調査費
また、議員については、政治倫理の確立が必要であり、三重県条例は、条例を定めることとしている。その報酬および政務調査費についても条例に基づいて適正に決定されることが要請される。
A研修
議員は、議会の構成員として住民の信託を受けており、その責務を的確に果たすために、適宜適切な研修を受ける必要があり、すべての条例でこれが規定されている。
3 条例の見直し
条例については、適宜あるいは一般選挙を経た任期開始後速やかに見直しをすべきことが定められている。
三 条例論点比較表
議会基本条例についは、北海道栗山町、同今金町、神奈川県湯河原町、三重県伊賀市、三重県を取り上げている。県、市、町が対象であるが、条例内容の基本的な仕組みは共通しているということができる。論点比較表では、○印は条例上明記されているもの、×印は、条例上明記されていないもの、△印は、条例上明確ではないもの又は一部のみが規定されているものとして表記している。なお、論点は網羅的ではなくかなり大まかなものであることをお断りしたい。
四 参考文献
1 基本文献
田中孝男・都築岳司「議会改革推進の起爆剤〜議会基本条例のベンチマーキング〜」自治体法務NAVI13号(2006年)20頁以下がある。
2 個別論点
@二元代表制
神原勝『現代自治の条件と課題』(北海道町村会、1995年)6頁以下が、その意義を解説している。
A議会の役割・運営
議会の役割・運営などについては、大森彌『新版 分権改革と地方議会』(ぎょうせい、2002年)で知ることができる。
B議会基本条例論
議会基本条例のモデルとその解説をする先駆的業績として、渡辺三省「議会基本条例の制定を契機としたこれからの議会の姿」北海道自治研究430号(2004年)22頁以下がある。また、札幌地方自治法研究会「議会による政策条例制定論」自治体法務NAVI4号(2005年)2頁以下も早い時期にこれを取り上げている。
C栗山町条例
同条例については、橋場利勝・神原勝『 栗山町発・議会基本条例』(公人の友社、2006年)が必読である。
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