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弁護士
やあ、Bさん。明けましておめでとうございます。お久し振りです。最近はA町もトラブルなく平和なようですね。
A町職員Bさん
それがそうでもないのですよ。現在A町では、指名競争入札の対象となる業者の選定基準の見直し作業を進めているのですが、その内容について町内で意見が分かれていて、町民の間でも、何か会合があると必ずこの話題になってしまい、中にはつかみ合いの喧嘩まで始める人もいる始末で(……と頭を抱える)。
弁護士
地方公共団体が公共工事を施工するに当たり、業者との間で工事請負契約を締結する行為は、私法上の法律行為ですので、基本的には契約相手方の選択も含めて、契約自由の原則により、入札参加者の指名についても、地方公共団体の首長に広い裁量権があることは、以前説明しましたよね。
Bさん
はい、しっかりと学習させていただきました。
弁護士
そうですか。具体的にはどのような内容について意見が分かれているのですか?
Bさん
隣町のD町に本社があるC社が、A町発注の道路工事で実績を上げているのですが、A町の業者を中心としたグループから「どうして自分たちでも出来る工事をわざわざ町外のC社にさせるのか。一定の工事については町外業者を指名しないようにすべきだ。」という不満の声が上がっているのです。業者の意見を正当と考える議員さんたちも多いので、町長も悩んでいるのですが……町外業者を指名の対象から外す基準を作ることなど許されるのでしょうか。
弁護士
それは入札制度の根幹にかかわることですし、なかなか結論を出しづらい問題ですね。町外業者を指名対象から排除すべきであるという人たち、町内業者保護派と呼びましょうか。このグループの意見の理由はどのようなものでしょうか?
Bさん
地元業者の方が工事現場の地理的状況にも詳しいし、工事現場の緊急時の対応も期待できること、地元雇用の創出ができること、A町のように人口わずか4000人足らずの町にとりましては、町の経済にとって公共事業の比重がとても大きく、指名競争入札の参加者の指名を町内業者に限定しても町民の利益を損なうことはなく、かえって利益になるというものです。
弁護士
なるほど、それなりに筋は通っていますね。反対派の意見はどうですか?
Bさん
建設業以外の仕事に携わっている町民の方々の多くは、工事の質も問題なく、受注価格も安いC社を指名からはずすことはとんでもないと主張しています。町外業者を指名の対象外とすれば、町内業者だけで入札することになって、談合したり、町と癒着して、競争性が低下し、受注価格が高くなり、結局町民の税金が高くなってしまい、町民にはマイナスとなってしまうという意見です。
弁護士
これもまた、極めて正当な意見ですね。ところでBさんはどう考えますか?
Bさん
実は、基本的には町内業者保護派の意見が正しいと考えていたのですが、ものすごく悩んでおり、先日、たまたまうちの町に町長と親しいので来られていた地方自治に詳しいE大学のF教授の意見を聞いてみたのです。
弁護士
F先生なら、とても地方自治や入札制度に詳しいから、適確なご意見をいただけたでしょうね。
Bさん
F先生は、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律は、公共工事の入札について、入札に参加しようとする者の間の公正な競争を要求しているし、地方自治法等の法令は、機会均等、経済性つまり価格の有利性の確保を要請しているのだから、指名の対象から町外業者を排除することは許されない。」と申されておりました。私もF先生に言われると全くそのとおりであると納得してしまい、今では反対派の意見が正しいと考えているのですが…………
弁護士
確かに、地方自治法二条一四項は、最少の経費で最大の効果を挙げることを要求していますし、地方自治法234条2項、同法施行令167条によれば、そもそも指名競争入札自体が一般競争入札の例外ですからね。理論的には、反対派に分があるようにも思えます。最近でも、徳島県のある村が工事について村内業者のみを指名するという運用をした結果、指名されなかった村外業者が指名回避を理由として損害賠償請求した事案で、最高裁は、村外業者であることのみを理由として指名しなかった村の措置が、極めて不合理であり、社会通念上著しく妥当性を欠くものと判断しました(注1)。
Bさん
そうですか。やっぱりF先生のご意見のとおりなのですね。
弁護士
ただ、今回の最高裁判決は、小法廷の判決であり、5人の裁判官のうち2人の裁判官が村内業者のみを指名することは村の利益増進につながるとして反対しておりますし、多数意見も地元の経済の活性化の寄与の必要性についてまで否定しているわけではありません。法律上も地方自治法1条の2第1項は、自治体の住民の福祉の増進を図ることを基本とすることを定めていますし、村が村内業者をある程度優遇することまで最高裁が否定しているとは考えられません。
ただ、A町についていえば、たんにC社が町外業者であることの一事をもって入札から排除することは、あまりにも経済性の原則を無視するものであって、合理性ありとはいえず、裁判で争われた場合には、町が敗訴する可能性も否定できません。
地元業者を優遇することがどうしても必要であるのなら、たとえば統合評価落札方式を採用し、「地域性」をある程度考慮する入札方式を検討することも必要と考えます。
Bさん
良く分かりました。早速戻って検討します。
(注1)最高裁第1小法廷平成18年10月26日判決(判例地方自治294号21頁)
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